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人形佐七

 ここのところ、横溝正史さんの『人形佐七捕物帳』をまとめて読んでいる。今までも『佐七』は光文社時代文庫の一巻ものや、角川文庫から出ていた傑作選集全3巻ほかで読んではいたのだが、今回、やっと春陽文庫版全14巻が読めるようになったのである。

 とはいえ、新刊本での入手はなかなか難しく、古書店でもあまり見かけないから、図書館を利用することにした。検索してみたら、世田谷区立中央図書館の書庫に、全巻が揃っていることが分かった。そこで、早速、予約して借り出してきた次第。

 ところで、私は図書館とはこういうふうに利用するものだと考えている。読書諸賢にも、新刊(新刊書店で入手できる本)は図書館で借りて読むのではなく、できるだけ購入していただき、それと合わせて、なかなか新刊の入手が難しい本も図書館を利用して読んで欲しい。そうすれば、出版文化そのものも痩せなくてすむし、個人としての読書文化も豊かになると思うのだが、いかがだろう?

 さて、横溝さんが捕物帳を書き始めるとき、岡本綺堂の『半七捕物帳』を強く意識したことはよく知られている。横溝さんの捕物帳の第1作目は、謎の浪人を探偵役に据えたものだが、これは岡っ引きを主役にしたのでは『半七』を超えることはできない、と考えてのことであったそうな。

 が、それが必ずしも成功せず、次作として岡っ引きを主役とした『佐七』の登場となるのである。この『人形佐七』という名前にしてからが、『半七』シリーズの中の1作「津の国屋」に出てくる若い岡っ引きの〈人形常〉にヒントを得たものである。

 だから、『佐七』には至る所に『半七』へのオマージュが出てくる。「三河万歳」のように『半七』のシリーズと同じタイトルのものも多いし、「梅若水揚帳」の最初の小見出しである「春の雪解け」も半七の中の1作にタイトルとして使われたものであ。また、同作の雪だるまの中から裸の死体が出てくるエピソードは、明らかに『半七』の「雪達磨」へのオマージュである。

 それはむろん、横溝さんが『半七』を模倣しているということではない。むしろ逆で、同じタイトル、テーマをわざわざ違った形で扱い、
『私ならこうやりますよ』
 と主張しているわけであって、まさにこれは『半七』や岡本綺堂への愛情溢れるオマージュである。そういうことを考えながら読むのも読書の醍醐味の一つだろう。

 今週いっぱいは、仕事を終えた後、いっぱい呑みながら『佐七』の世界を楽しみたいと思う。
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[ 2009/12/10 00:17 ] 日常生活 | TB(0) | CM(-)
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松井計のプロフィール

松井 計

1958年7月5日生まれ。大学卒業後、英語講師、古書店店主などの職を経験。1995年7月短編戦記小説集「血戦! 帝国艦隊進撃ス――零戦隊激闘記」を松井永人名義で刊行、文筆生活に入る。2001年幻冬舎より刊行した「ホームレス作家」から筆名を本名に戻し、以降は松井計の名前で活動、現在に至る。趣味は野球、酒、猫。社団法人・日本文藝家協会会員。

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